Player 立ち読み
Body
実家から届いた米を炊いて、湯気のあるうちに食べた。店の休憩では時計を見ながら済ませることが多いので、茶碗を置いてから次の一口まで急がなくていいのが、思った以上に楽だった。漬物は少ししょっぱくて、白いご飯が進む。食べ終わる頃には足の裏の熱も気にならなくなっていたけれど、立つとまだじんわり残っていた。湯船で読む本を選んだあと、今日は本なしでもいいかと思って棚に戻した。目を閉じてお湯につかると、店の照明の明るさがまだまぶたの裏にあるような感じがした。長湯をするとまたのぼせるので早めに出たが、部屋に戻ったら眠くなり、結局選んだ本は一ページも進まなかった。
Mind
母への返事を書いていたら、店であったことばかりになった。自分がどう暮らしているかを書こうとしているのに、売れた本、棚を替えた話、常連さんの話で便箋が埋まる。店の外のことがないわけではない。帰りに寄った古本屋も、夜に一人で食べたご飯も、書こうと思えば書けるのだけれど、母が知りたいのはどの辺りなのかと考えると手が止まる。元気ですと書くと、後に続く小さな愚痴が嘘みたいになるし、愚痴から始めると心配をかけそうだ。とりあえず米がおいしかったことを先に書いた。そこは迷わない。そのあと何を書くか、まだ封筒を出さずに考えている。
Emotion
毎週本を選ぶお客さんが、先週の一冊について「これはあまり合わなかった」と教えてくれた。残念だったけれど、嫌だった箇所を具体的に話してくれるのが少しうれしかった。気を遣って面白かったと言って終わりにされるより、その人の好みが見える。ただ、仕事としてはそう思えても、自分の好きな本だったので帰り道まで少し引きずった。私を嫌いと言われたわけでもないのに、おかしい。次は別の作家にしようと思いながら、あの本の好きな場面も思い出していた。帰宅してもう一度開いたら、やっぱり私は好きだった。人に勧める時だけ、その気持ちを一度横へ置く必要があるのだろう。まだ少し残念だけれど。