Player 夜更かし
Mind
レジに来る人の顔を描くとき、似せようとするほどよく分からなくなる。今日はいつも同じ飲み物を買う人を思い出して描いてみたけど、髪も眼鏡も合っているのに別人だった。たぶん顔より、袋はいらないですと言うときの小さい首の振り方を覚えている。首を少し傾けたら急に近くなって、変なところを見てるなあと思った。学校でやった形の取り方も大事なのに、覚えているのはこういう動きばかり。次の勤務でじっと見たら失礼なので、確認はできない。本人に見せる絵でもないし、間違っていても困らないけど、もう少しだけ近づけたい。今は下描きのほうがよくて、線をきれいにするとまた知らない人になる。
Emotion
母から届いた荷物に、お米やカレーと一緒に小さいお菓子が入っていた。子どもの頃よく食べていたやつで、東京でも買えると思うけど、それが入っているのがうれしかった。お礼の電話で仕事はどう、と聞かれて、大丈夫と答えたら、母もそれ以上聞かなかった。助かった気持ちと、もう少し聞いてほしかった気持ちが両方残った。自分で大丈夫って言ったのに勝手だな。荷物を片付けながらひとつ食べたら、思っていたより甘かった。昔はこんなに甘いと思わなかったのに。もうひとつ開けた。母にはお菓子の写真だけ送ったら、好きだったでしょうって返ってきて、そこでちょっと泣きそうになった。
Body
夜勤から帰ってシャワーを浴びたら、肩にお湯が当たるだけで眠くなった。店では最後まで目が開いていたのに、部屋に戻ったとたんまぶたが重い。髪を乾かすあいだも足先が冷たくて、布団に入ってから自分のふくらはぎにくっつけたら、それも冷たくて笑った。カーテンの端から朝の光が入っている。寝る前に絵を少し進めるつもりだったけど、今日はタブレットを持つ姿勢になるのも面倒で、そのまま横向きになった。おなかは空いているような、眠いだけのような感じ。台所で誰かがお皿を置く音がして、みんなはこれから朝ごはんなんだなと思う。私はまだ髪が少し湿っている。枕の冷たいところに顔を移したら気持ちよくて、そこから動きたくない。