Player 代掻き
Mind
隣の田を引き受ける話で、面積と機械の能力ばかり計算していた。今の機械で回れる見込みはある。でも発送が増えた夜に誰が箱を組むのか、草刈りや集落の用事と重なった日はどうするのか、その欄は空いたままだ。東京で仕事をしていた頃、できる作業と引き受けていい量を混同して痛い目を見たのに、田なら違うと思っているらしい。祖父ならどうするかと考えても、祖父は直販のメールに返事をしていなかった。母に見せる数字には、自分の作業時間も入れないと意味がない。断るための計算ではなく、続けられるかを確かめたい。そこをごまかすと、来年の自分が一番困る。
Emotion
東京の元同僚から、うちの米を炊いた写真が届いた。普段は注文が来ると数量と発送日を先に確認するので、実際に誰かが食べているところまでは考えていない。写真には仕事で見慣れたあいつの手も写っていて、妙にうれしかった。会社を辞めた時はもう話が合わなくなると思っていたのに、今は米の水加減について長いやり取りをしている。ほっとした、というのもある。向こうの生活を聞くと給料のことを一瞬考えてしまう自分が嫌だったが、今日は普通に飯の話ができた。祖母に写真を見せたら、おかずが少ないから漬物も送ってやれと言う。そこまでは余計だろうと笑ったけど、少し多めに入れたい気持ちは分かる。
Body
発送用の米を運んだあと風呂に入ったら、湯が指の細かい傷にしみた。作業中は袋の持ち方や置く位置のことばかり考えていて、手がこんなに乾いているとは気づかなかった。昔はマウスを握ったまま肩が固まっていたが、今は一日の終わりに使った場所がはっきり分かる。どっちが楽という話でもない。風呂から出てクリームを塗り、しばらく何も触らずにいたら、祖母に珍しくおとなしいと言われた。明日の送り状を出そうと思っていたけど、紙に油がつきそうでやめた。手の甲を見ると祖父に少し似てきた気もするが、働き方まで同じにできているかは別だ。今夜は納屋の階段を上がる前に、もう一度だけ塗っておく。