Emotion
孫が子牛の名前を覚えていて、牛舎に入るなり自分から呼んだ。教えた時は聞いていないように見えたので、少しうれしかった。妻に話したら、ずいぶんうれしそうだねと言われた。そこまでではないと答えたが、名前を間違えなかったことまで二度説明していたから、そうなのだろう。将来どうするかという話にはしたくない。ただ今、あの子がここを好きで来てくれるのがいい。帰る時に長靴を揃えて置いていった。次も来るつもりなのだと思って、そのままにしてある。小さな長靴で通り道が狭くなるほどでもない。息子の長靴も昔はあの場所にあったが、それを言うとまた話が長くなるので黙っていた。
Mind
息子が搾乳の機械を替える話をした。頭数と人手を考えれば検討する理由は分かる。それなのに私は、故障したらどうする、牛が慣れなかったらどうする、と難点ばかり挙げていた。答えを聞いても次の難点を探していたので、自分でも少しおかしかった。仕事を渡した以上、最後に決めるのは息子だ。そこは分かっている。たぶん私は、新しい設備で自分が何をするのかを先に知りたい。牛を見る仕事がなくなるわけではないが、今の朝と同じではなくなる。その話を機械の欠点として言っても仕方がない。見学に行くなら一緒に行くとだけ伝えた。まだ賛成したわけではないが、見ないまま話すよりはましだろう。
Body
昼飯のあと、窓際の椅子で新聞を読んでいた。日が背中に当たって暖かいので、上着を脱いだり着たりせず、そのまま少し丸くなっていた。妻に眠るなら布団へと言われたが、眠るつもりはなかった。次に時計を見たら、新聞を持ったまま三十分ほど進んでいた。首が少し固くなったので、ゆっくり回して湯を飲んだ。朝から動いている脚はまだ重かったが、頭のほうはすっきりしていた。若い頃は昼に座っていると仕事を忘れた気になったものだが、この窓の暖かさはなかなかよい。犬も同じ場所を狙っているらしく、立つとすぐ足元へ来た。外へ行くのかと思わせたようだ。今日は椅子を直しただけだと言っても分からないので、結局少し歩いた。